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解雇その1

こんにちは! ラッパー社労士の上野です。昨年からやっている受託公務(相談員)の相談件数が3,000件を超えました。中でも圧倒的に多いのが雇い止め。これは有期雇用契約における解雇みたいなものですが、最近マスコミでも良く報じられている改正労働契約法第18条(無期雇用への転換)をめぐって、日本中の企業がこぞって無駄な抵抗を繰り広げています。詳細は後述しますが、今回から2回は解雇(雇い止め)に関するお話しをしようかと思います。

 

解雇というと何だかとても悪いイメージ(悪い事してクビになったみたいな)がありますが、必ずしもそうではありません。一口に解雇と言っても種類があって、

普通解雇、整理解雇、諭旨解雇、懲戒解雇の4つが良く知られています。

 

整理解雇は会社が左前になった時(潰れそうな時)に社員に辞めて貰って会社を再建する手段。これはそれなりの割増退職金が加算されることもあります。

 

懲戒解雇はサラリーマンにとっては死刑クラスの重罪。会社のお金を横領したとか、顧客情報を売り飛ばしたとか、刑事被告人になったとかいわゆる重責解雇というもので、30日前の予告などは不要、退職金が不支給になったり雇用保険は自己都合扱いになるわ、とにかく踏んだり蹴ったりですね。(悪いことしたのだから当たり前ですが、、、ちなみに履歴書等の賞罰欄には誠実に記載すべき事項だと言われています。)

 

諭旨解雇は実は労働基準法にはない概念で、本来は懲戒解雇に相当するが、それまでの会社への貢献なども斟酌して「退職金も払うから自分から辞表書いて辞めなさい」というパターンです。労働者側から見ると諭旨退職。お偉いさんクラスでたまに見かけます。

 

今回取り上げるのは普通解雇。労働者側の瑕疵によりで会社が雇用契約を解除する事です。本邦以外の会社では一般的に行われているみたいで、普通解雇されたからって別に悪いイメージはありません。お付き合いしていた男女が「じゃあね」ってお別れする感覚に近いです。

 

ところが日本の会社では(例え外資系と言えども)解雇するのはタイヘン!!

なんてったって労働契約法第16条がありますから。「客観的に合理的な理由を欠き。社会通念上相当でないと認められるときは無効です!」とバッチリ書いてあるので、裁判で解雇が有効と判断されることは稀です。

 

客観的に合理的な理由? 社会通念上の相当性? なんですかそれ? と良く聞かれますが、一言で言うと前者は労働者が犯した罪の程度、後者はそれに対して会社がどう対応したかという事です。

 

更に分かりやすく言うと、遅刻や欠勤、成績不振程度では解雇の客観的かつ合理的な理由とは言えないし、2週間以上無断欠勤したりちょっと部長を小突いたりしたからって(即解雇ではなくて)会社はちゃんと連絡取ろうと努力したの? 部長はやられっ放しだったの?という意味ですよ。

 

だいたいの会社は後者(労働者瑕疵に対する対応)が不備不誠実なので、例え前者(労働者瑕疵)が結構まっとうな場合でも裁判で負けてしまう事が多いようです。また不当な目的(気に食わないヤツだから解雇ありきで物事を進める)が明らかになった場合も解雇は無効となります。

 

これはさる高名な労働者側弁護士(偶然にも高校の先輩だった!)に聞いたのですが、企業側弁護士が不当な目的を伴った解雇を実行する時は、最低でも半年、通常は1年程かけて「客観的で合理的理由」と「社会通念上の相当性」を構築し(こういった場合はでっち上げと言う方がイイかも)追い込んでいくのだそうで、、、コワイお話しですなー。また本来は全く別の目的があるMBO(目標管理制度)やPIP(業務改善計画)を巧みに操って悪のツールとしている会社も少なくないとか!

 

今回はこのあたりで。。。 次回は解雇と退職(似て非なるもの)についてお話しです。

 

2018/03/16